中高年の人に多くみられる過活動膀胱。日本排尿機能学会の調査によると、40歳以上の男女の12.4%にみられ、その割合は年齢が上がるにつれて多くなっています。「恥ずかしい」「年だから」と放置することなく、きちんと対処することが大切です。
膀胱が異常に活動してしまう病気
「急に強い尿意に襲われ、我慢できない」「帰宅して玄関のドアを開けようとしているときや水に手が触れたとき、急にトイレに行きたくなり、我慢できなくなる」「トイレに行きたいと思ったら、トイレにたどり着くまでにもれてしまう」-これらは過活動膀胱の代表的な症状です。
過活動膀胱とは、文字どおり膀胱が異常に活動してしまう病気をいい、尿がそれほどたまっていなくても突然強い尿意を覚えるのが特徴です。加齢や妊娠・出産などによる骨盤底筋の衰え、前立腺肥大症などで尿道の通りが悪くなる下部尿路閉塞、膀胱や直腸の一部が膣から飛び出る骨盤臓器脱などが原因で起こることがありますが、原因がはっきりしない場合も少なくありません。
トイレに行きたくても我慢する膀胱訓練
治療は薬物療法が一般的で、膀胱を収縮させるアセチルコリンの働きを弱めるタイプの薬や、膀胱の筋肉をゆるめて尿を溜める機能を高めるタイプの薬が主に用いられます。
薬物療法とともに治療で欠かせないのが膀胱訓練です。膀胱は本来、非常に伸縮性に富んだ臓器です。過活動膀胱は、膀胱に尿がいっぱいたまっているわけではありません。尿が少ししか溜まっていないのに、尿意を感じたらすぐにトイレに行ってしまうと膀胱の伸びが悪くなります。
そこで、トイレに行きたくなっても我慢して膀胱に尿を溜め、膀胱をゆるませるというのが膀胱訓練です。最初は5分くらい我慢して、徐々に時間を延ばしていきます。
骨盤底筋を鍛える体操も有効
過活動膀胱の原因の一つに骨盤底筋の衰えがあります。膀胱訓練とともに骨盤底筋を鍛える体操を行うと、症状改善により有効です。
体の力を抜いてリラックスし、肛門、膣、尿道をキュッと締めます。5つ数えたら、ゆっくりと力を抜きます。これを4~5回を1セットとし、1日10セット行うのが目安です。骨盤底筋体操は、クシャミをしたとたんに尿がもれるといった腹圧性尿失禁対策にもなります。
過活動膀胱のような尿トラブルがあると、トイレが気になって電車や車に乗れない、外出を控えるようになる、就寝中に尿意で何回も起きてしまい睡眠不足になるなど、生活の質(QOL)の低下を招きやすくなります。放置せずに受診することが大切です。なお、尿トラブルでわからないことがあるときは、薬剤師に気軽にご相談ください。
~classA 薬局の健康情報紙 ライフ 2020年 2月号より